2017年7月28日 記
「パイロットウイングス」。
スーパーファミコンの本体が発売されてから1か月後の1990年12月21日に発売された任天堂によるスーファミソフトの第三弾は、スカイスポーツ・シミュレーションの名作だった。
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目次
1. 一見地味な第三弾
任天堂スーファミ用ソフトの第三弾
スーパーファミコン(スーファミ)本体の発売から1か月後の1990年12月21日、任天堂が世に送り出した第三弾ソフトが「パイロットウイングス」だ。本作は、スーファミの新機能の回転・拡大・縮小を大いにアピールするものとなっている(※)。元々、プレス向けにファミリーコンピュータ(ファミコン)後継機をアピールする為のデモンストレーションから発展し、ソフトとして発売されたものだった。その内容は、滑らかに平面的な動きをする「F-ZERO」に対し、3次元的なスムーズな動きをアピールするものとなっている。
(※)スーファミの特徴に関しては、「F-ZERO>1. スーファミのローンチタイトル」をご参照。
ローンチタイトル2作品との比較
しかし、「フライトクラブ」に入会してスカイスポーツを楽しむという本作は、ローンチタイトル2作品に比べてとても地味だった。まず、ファミコンの地位を不動のものとした「スーパーマリオブラザーズ」シリーズの第四弾となる「スーパーマリオワールド」には、シリーズの実績や期待感があったが、「パイロットウイングス」は全くの無名の新作だった。その上、こちらも新作の「F-ZERO」は、近未来をモチーフとしたスピード感溢れるレースゲームであり、当時の子どもに受けそうなカッコ良さがあったのだが、「パイロットウイングス」で操るのは、手に汗握る戦闘機ではなく小型のプロペラ機や大空を優雅に舞うハンググライダーだった。今様に言うならば、プレイ画像が“インスタ映えしない”のだ。体験版の配信という手法が打てなかった時代にあって、プレイ中の静止画像が地味というのは、当時の任天堂も、販促には相当苦労したことだろう(※1)。
(※1)「パイロットウイングス - Wikipedia」によると、最終的な国内販売本数は約48万本だそうである。ちなみに、「スーパーマリオワールド」は約355万本、「F-ZERO」は約90万本とあるので、ローンチタイトル2作品に大きく水をあけられた形だが、「パイロットウイングス」と同じ日に発売されたスーファミ用ソフトは、共にアーケード版からの移植作であるコナミの「グラディウスIII」とカプコンの「ファイナルファイト」だった。故に私は大いに健闘した方だと思う。
秀逸な操作感覚
それでいて、「パイロットウイングス」とは、シンプルなプレイ画面ながらも、飛行機(ライトプレーン)を操縦している感覚が程よく再現されており、なかなか狙い通りの場所に着地出来ないスカイダイビングの難しさを体感できた。そして、“慣性とはまさにこんな感じ”と理科の授業を思い出させるロケットベルトの推進力の再現性に驚かされ、“地球には重力があって空を飛ぶとは風を掴むことなのだ”と再認識させられるハンググライダーの浮遊感が見事な作品なのである。これらは、実際にゲームを触ってみなければ体感できないものばかりであり、プレイ画像だけを見ると、「何故、砂漠の真ん中に滑走路がポツンとあるのか。」など、様々な疑問が生じるが、そんなことは枝葉末節でしかないことは、実際にプレイしてみればお分かり頂けることだろう。特に、ライトプレーンで離陸する瞬間にふわっと浮かび上がる感覚の再現が非常に良く出来ている。飛行機に乗った事のある方は、離陸時のふわっと感を思い出しながら、是非一度プレイして頂きたい。
任天堂自身、スムーズな疑似3Dを表現する為に、早くもスーパーファミコン本体の処理能力の限界を感じていたのか、スーファミ用ソフト第三弾にして拡張チップ(DPS-1:演算処理のサポートチップ)を搭載していたそうだ(※2)。「パイロットウイングス」のフライトシミュレーションとしての完成度は非常に高く、その続編「パイロットウイングス64」が「スーパーマリオ64」と共に「NINTENDO64」(1996年6月23日発売)のローンチタイトルになっている。新機種の性能をアピールするのに最適なゲームソフトだったのだろう。
(※2)初期ロットには搭載されていなかったそうなので、クリスマス商戦に間に合わせる為に拡張チップ無しで初期ロットは出荷したように思える。となると、ローンチタイトルとして開発を進めていたが、11月21日には間に合わなかったと考えた方が素直かもしれない。うーん。当時、情報誌で関連記事を読んだ気がするのだが、検索してもヒットしなかった。ファミコン雑誌、捨てずに取っておけばよかった・・・。
次章では、そんな「パイロットウイングス」のゲームシステムをご紹介しよう。