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  入り口の扉を開くと、その酒場は活気に満ちていた。
  体に付いた雪をざっと払い落とし、適当な席に腰を落ち着ける。

    「Merry Christmas!!」
  ふと見上げると、既に出来上がった親父が、エールのジョッキを片手に声をかけてきた。
  慌てて自分のジョッキを掲げ、挨拶を返した。
  親父は満足そうに次のテーブルへと去って行った。。。

    「・・・へー。で、その当時の、この“Mugen”という世界はどんな所だったんです?」

  声のした方に目をやると、人集りができていた。
  その中心には浅黒い肌をした旅人がいた。

    「ここは、昔も今も、ほとんど変わっちゃいないさ。。。」
  彼はそう言い終えると同時に何かを思い出したようだった。

    「そう言えば、家を建てる話は、最近やってきた人には珍しい話かもな。その話をしようか。。。」

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     ――やっと半分か・・・。
    無事に狩りを終える度に、銀行の預金残高を数えては、そう思ったもんさ。

    ここMugenという破片世界(シャード)は、知っての通り、他の世界とは違う。
    例えば、生産者や戦士などを分担することなく、何でも自分一人の力でやっていかねばならない。
    そして生活する上で重要なことは、アイテムの買取りサービスが全くないことだ。
    戦利品の宝石一個も、街の奴らは買い取ってはくれないんだ。

     ――もし、拾ったアイテムがこの値段で売れれば・・・。
    ここにいる皆が、一度はそう思ったんじゃないか?

    しかし、ここも悪いことだらけじゃない。
    例えば、ROTという独自のスキルシステムで、時間はかかるが誰もが確実にスキルを最大まで持っていける。
    また、いわゆるトランメルルールが皆無なので、どこでもPvPしたい放題さ。
    よく言えば常に緊張感を味わえるんだ。

    だから、緊張感を求めてやってくる奴も多いだろう?

    俺は、ちょうどその頃、魔法とEIあたりがGMになったばかりだった。
    そして、とりあえずSmall Houseの家を持つことを目標に決めた。

     ――何故かって?
    そりゃ当時は、どの破片世界にいくらでも家が持てた時代だ。
    しかし、他の破片世界では、余った土地なんてこれっぽっちもなかった。
    ところが、このMugenでは、土地は余ってた。
    だから、一番小さな家でも良いから、家を建てたかったんだ。

    だけど、その家の証書を買うのが大変だったんだよ。
    そうそう。今でこそ、“建築ツール”なんて便利なものがあるが、当時はそれがなかった。
    その代わりに、建てたい家の証書(House Deed)を用意する必要があったんだ。

    そしてMugenでは、家の証書が“べらぼうに”高かった。
    他の破片世界の10倍はしたんじゃないかな。
    しかも、一度買った証書を、街の奴らは買い取ってくれない。
    だから、より大きな家を建てるとなると、小さな家の証書が余る。

    そこで、冒険者は皆、コミュニティで余った証書を必要としている相手を探すんだ。
    もちろん、そうやって出回る家の証書は、街の販売人のよりも安く出回る。

    そうでないと売れないからな。

    こうして、俺のように後からMugenに来た奴は、街で売っている証書は買わなくて済んだ。
    コミュニティでは、家の権利書の売買が盛んだったもんさ。

    この証書の循環は、なかなかよく出来たサイクルだったと思うよ。

     ――ん?いくらだったのか、だって?

    確か、Small Houseで200,000gpだったかな。
    おいおい。意外に安いなあ、と笑うもんじゃないよ。

    当時はMLボスなんて影も形もなく、徳之諸島やマラス大陸もなかったんだ。
    狩場が限られていたんだよ。

    そして、狩場と言っても、確か、当時からダンジョン内ではルーンが焼けなった。
    入り口から徒歩さ。

    また、どの狩場でも、PKが定期的に巡回しに来たもんだ。
    狩場も少なかったからな。巡回の回数はかなり頻繁だった。
    こっちは、魔法とEIしかないんだ。どうやって戦う?

    どうしようもないさ。
    来ない事を祈るのみだったよ。(苦笑

    そうして、俺が選んだ狩場は、Shameの土エレさ。

    今でこそ100gp足らずの所持金だが、当時は300gpほど持ってたからな。一番効率が良かったよ。
    なんせ、街の奴らはアイテムを買い取ってくれないからな。
    ああ、これはさっきも言ったっけ?

    そりゃ毎日、土エレ狩りに明け暮れたよ。
    “転送袋”なんて便利な物もなかったんだ。
    バックパックがお金で一杯になるまで粘るんだ。

    しかし、狩場に長くいればいるほど、PKされる可能性も高まる。
    折角集めた1万gpを一瞬で失う。そんなことも多かった。
    PKはそれほど頻繁に、またランダムにやってきた。出遭った瞬間、文字通り“瞬殺”さ。

    今でこそ、Mugenのお金は他の世界より価値が低い、なんて言われているが、当時は逆だった。
    俺が来た時で、他の世界の五倍くらいだった。
    もっと前は、他の世界の十倍なんて時もあったらしい。
    それくらい貯めるのが大変で、貴重だったんだ。

    こうして、何とか貯めたお金を握り締め、取引の場に向かった。
    とても緊張したよ。
    お蔭様で、無事に証書を得られたよ。
    その後、より立地の良い空き地を見つけては、建築を試したもんさ。
    結局、ムーンゲートの真ん前あたりに落ち着いたかな。
    家を建てた時は、そりゃあ、感慨深かったよ。
    冗談でなく、長かったShame通いが、走馬灯のように頭を過ぎったもんさ。
    ・・・。

    なんか、取り止めもない話になっちまったな。ごめんよ。。。
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  そう言うと、浅黒い肌の彼は、自分のジョッキに手を伸ばした。
  今日はクリスマス。
  いつもより饒舌になっていたのかもしれない。。。

  彼の話が終わった時には、自分のジョッキも空になっていた。
  彼の言った“緊張感を求めてくる奴”とは正に自分のことだった。

  とは言うものの、まだまだ来たばかりでスキルも上がりきってはいなかった。
  が、他では味わえない緊張感を感じる為に、また明日も出かけることだろう。

  かつて“夢幻”とも呼ばれたと言われるこの世界を、徐々に好きになりつつあった。

  外ではまだ、雪が降り続いていた。
  どうやら今年は、ホワイトクリスマスだ。。。

  ========================================《end》==



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全体の壁紙:Haven Companion Hall 東の雪景色(Mizuho)。
表の壁紙:Skill帳の下地。
※小説(?)の背景世界は、2002年の夏ごろでシャードはMugenです。

さらに、当時はBGMに「tavern04」(UO:R)を使用していた。


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