2014年2月28日 記
2015年11月28日再構成
3. 「危険な二人」の思い出
最後に思い出話をして、本稿を終えようと思う。特段取り上げるべきテクニックや小ネタが無いので、今回は3頁構成である。
家族の団らん
子供だった当時、TVゲームは週末に兄弟一時間ずつ合計ニ時間の枠しかなかったと、何度か書いてきたと思う。しかし、そんな我が家でも、一日中ゲームをしていても怒られない時期があった。
正月である。
前述の通り、ファミコン雑誌の記事を読み比べて、吟味に吟味を重ねてようやく手にした本格推理アドベンチャーゲーム「危険な二人」が発売されたのは、ちょうど冬だった。特に12月発売の「前編」は、正月行事としては“もってこい”だった。こたつの中央にファミコンの本体を置き、兄弟で順番にコントローラーを握り締め、TVゲームには全く興味が無いものの、推理物の小説が好きだった父も交えて、家族総出で、新しいキャラクターが登場してはメモ帳代わりの広告の裏に鉛筆でメモを取りながら、ドキドキしながら進めていった。そんなゲームだった。
「おまちください」
話は変わるが、ディスクシステム用のソフトとして発売された「危険な二人」には、ディスクシステム特有の利点と欠点があった。利点というのは、既に述べた通り、ディスクカードと言う名の磁気ディスクを利用したセーブ機能だ。これにより、ゲームを一気に解かなくても中断できる。プレイ時間を制限されていた子供には有り難い機能だ。そして、欠点というのは、写真のような読み込み時間だ。ロムカセットに比べてディスクカードは読み込みに非常に時間がかかった。場面を移動する度に写真のような真黒な画面が表示されるのだ。これは「危険な二人」に限った問題ではなく、ディスクシステム側の問題なのだが、やっぱり「ばしょいどう」するのが面倒になってくる。テンポが悪いのだ。こういう利点と欠点を比べた結果、「探偵 神宮寺三郎」シリーズはディスクカードとロムカセットで交互に出されたのかもしれない。
複雑な人間関係と親切設計
今回の紹介動画でもご紹介したが、「危険な二人」は親切設計だった。左の写真を見て頂きたい。これは、「ばしょいどう」を選択した直後のワンシーンだ。画面上には「それよりも......」と表示されるだけで移動は出来ない。実は、この場面で得られる重要な情報を未だ貰っていないのだ。このようなスムーズにゲームを進める為の何気ないヒントは、後のアドベンチャーゲームでは当たり前に組み込まれている機能ではあるが、「危険な二人」以前にはあまり見られなかった工夫である。
これまで、ファミコン初期のアドベンチャーゲームには、コマンド選択方式特有の「早く解き易い=プレイ時間が短い」というTVゲームとしての弱点を補う為に、数々の“引き延ばし策”が講じられたと書いた。そして「危険な二人」には、幸いにしてそのような無駄な引き延ばし策が組み込まれなかったとも書いた。さらに「危険な二人」には何気ないヒントまでもが散りばめられている。これが示すことは何か?・・・そう、登場人物の人間関係がとても複雑で、情報の整理が大変なのだ。流石に、いつでも参照できる捜査メモのようなまとめ機能までは無かった。今再挑戦してみると、レトロゲームゆえに荒削りな部分も多々見られる。しかし、本作未体験の方は、是非一度、紙とペンを用意してリアルにメモを取りながら、さながら本物の名探偵になったつもりで、80年代の香り漂う難事件に取り組んで頂きたい。
4. 終わりに
「探偵 神宮寺三郎 危険な二人」いかがだったであろうか?
ファミコン実機と中古のソフトを用意すると言うのも良いが、Wii U(またはWii)でWii版のバーチャルコンソール(VC)版を購入するのが、一番手軽ではなかろうか。なお、2015年11月現在、「探偵 神宮寺三郎 危険な二人」はWii版VCのみでお楽しみいただける。