2013年9月4日 記
2015年10月4日再構成
7. 思い出
最後に、「スターラスター」に関する思い出話をいくつかご紹介して、本稿を終えようと思う。
「スターラスター」と英単語
「スターラスター」に出てくるメッセージは、基本的に英語だ。その上、突如として警告音と共に点滅表示される「DEFEND STAR」や「STAR EXPLODED」などの表示時間はとても短い。警告音の違いから、味方が攻撃を受けているのか、それとも消滅したのかは判別出来るものの、それが星なのか基地なのかは、メッセージを読まなければ判らない。
我が家のゲームラインナップに「スターラスター」が加わった時、私はまだ小学生だった。当時は、今のようにインターネットも普及しておらず、子供が外国語に触れる機会もかなり低かった。しかし、「スターラスター」に出てくる英単語を覚えなければ、ゲームの状況が理解できない。それ故、BEAMやSHIELDの綴り、「DESTROY ALL ENEMIES」や「MISSION COMPLETED」という表現は、この時覚えた。
しかしながら、「REACTOR POWER UP」と言われてもエンジン回りの具体的に何が良くなったのかはイマイチ分からず、「SUPPLY COMPLETE」に至っては、その回の補給で自機が何らパワーアップしてないので、SUPPLY=ハズレのイメージだった(※1)。
(※1)COMMANDモードとADVENTUREモードで、初めて訪れた補給基地のメッセージが「SUPPLY COMPLETE」の場合、条件を満たせばフォトントーピドー(光子魚雷)を8発補充出来るので、その基地で全くパワーアップ出来ないわけではない。ちなみに、光子魚雷補充時のメッセージは「PHOTON CHARGED」である。
1ドットの戦い
ADVENTUREモードで全てのキーを集めて水色惑星に行くと、ようやく最終目的地をレーダー画面に示してもらえる。少々ネタバレになってしまうが、この最終目的地とは、レーダー上では1×1のドット(点)である。この1ドットを、正確にカーソルの中央に捉えなければ、最終目的地には到達できない。30年後の現在なら、スマホで写メを撮れば事足りるだろう。しかし、当時はそんな手段も用意されておらず、さらに厄介なことに、水色惑星が示してくれるのは、ごく短時間で、かつ、一度だけなので、慌ててメモしなければならない。そのメモの方法が何ともアナログだった。
「(ポイントが)出たら指で押さえててや。」
兄にそう言われても、その頃実家にあったTVは、当時主流だった小さなブラウン管だった。さもすれば、今どきのノートパソコンにでさえディスプレイの大きさで負けるかもしれない。それほど小さかった。ましてや子供の指である。正確に1ドットを指し示せるはずもなかった。
「あー!何もないやん!ちゃんと指で押さえな。」
全くもって理不尽である。しかし、当時の兄もまた、小学生である。他の手段は用意しておらず、闇雲にワープを繰り返すも、全くヒットせず、無駄にENERGYと言う名の時間ばかりを消費してしまう。結局、敵編隊殲滅に目標を切り替えて、仮初めのエンディングを迎えることになる。
その後学習した私たちは、点滅する1ドットの横軸に合わせて急いでセロテープを貼り、爪先で1ドットの縦軸を押さえることで、確実に最終目的地へと飛べるようになった。表示されている時間の関係で、セロテープ二枚を貼る余裕は無かった。
ゲーム終了後、ブラウン管のセロテープを剥がし忘れ、帰宅した父が「なんやこれ?・・・どういう悪戯や?」とTVを前にして首をひねっていたのも、今となっては良い思い出である。
手軽さと緊張感
「スターラスター」は、COMMANDモードで一回15分、難易度の高いADVENTUREでもせいぜい30分程度である。もちろん、セーブも出来なければ、残機が増えたりもしない。しかし、その手軽さと緊張感のバランスが、私にはちょうど良かった。
一回のプレイ時間が限られるというのは、これが意外に便利である。例えば、いくつかの面をループする類のゲームだったら、慣れるとリセットするまで際限なく続いてしまいがちなので、プレイ時間が読めなかったりする。他にも、後に現れる大作RPGのようなものなら、いつエンディングを迎えられるかは、それこそやってみなければわからない。
(ちょっとだけ遊ぼう・・・ならCOMMANDモードだな。)
「スターラスター」は、プレイ時間の使い勝手がすこぶる良いのだ。「スターラスター」のマップはその都度ランダムに決まるので、全く同じ展開というのもあまり無いのも嬉しい。
それでいて、結構シビアな選択にも迫られる。こちらは戦えるのが自機しか居ないので、戦況が変化し、「DEFEND BASE」「DEFEND STAR」と立て続けに言われても、応援に駆け付けられるのは一か所だけだ。どこから助けるのか、素早く決断しなければならない。「スターラスター」とは、瞬時の判断が求められる、緊張感溢れるゲームでもあるのだ。
3Dシューティング
子供の頃の私には、テレビゲーム(またはビデオゲーム)と言えば、「アクションゲームとシューティングゲームが双璧」というイメージがあった。なので、ゲームをする時も、
(この前はアクションゲームをやったし、次はシューティングかな。)
と、何とは無しに交互にやろうとしていた。
当然ながら、遊ぶゲームは時と共に変化した。例えば、格闘アクションタイプなら「イー・アル・カンフー」(コナミ、1985年4月発売)から「キン肉マン マッスルタッグマッチ」(バンダイ、1985年11月発売)と言うようにだ。
しかし、遊ぶ3Dシューティングは変わらなかった。「スターラスター」一択だった。さらに不思議な事に、たとえ中学、高校と進んでも、はたまたハードがファミコンからスーパーファミコンに移行しても、結局3Dシューティングはファミコンの「スターラスター」に戻っていた。
確かに、コックピット内に描かれた計器類は少なく、本当に宇宙が飛べるのかと思えるほどショボイ。その上、自動車のバックミラーのような後方確認のできる装備も無い。このように、「スターラスター」と言うゲームは、戦闘機によるリアルな3Dシューティングシミュレーションと言うよりも、2Dシューティングゲームをコックピットからの1人称視点にしましたという感じが強かった。しかし、ゲームとはそれで良いんじゃないだろうか。ゲームに求められるリアルさとは、決して描画の写実性だけでは無い気がする。その後、様々なタイプの3Dシューティングが登場したが、「スターラスター」ほどシンプルでいて奥深く、ゲームらしさと“それっぽさ”の同居したものはあまりなかったように思う。
そう言えば、「スターラスター」が販売されていたころのナムコのキャッチコピーをとてもよく覚えている。最後にその言葉で締めようと思う。
――クーソーしてから、寝てください。――
ゲームの基本はここにあると思う。
8. 終わりに
「スターラスター」いかがだったであろうか?
ファミコン実機と中古のソフトを用意すると言うのも良いが、Wii U(またはWii)でWii版のバーチャルコンソール(VC)版を購入するのが、一番手軽ではなかろうか。3DS版のバーチャルコンソール版も販売されている。また、WiiのVC版では、ファミコン版に比べてGAME OVER時の爆発シーンのフラッシュ演出がカットもしくは低減され、スコア画面が少し早く表示されていると思われる。さもすれば、敵機撃破時のフラッシュ演出も、ファミコン版に比べてカットもしくは低減されているかもしれない。